なぜ今木造なの?VOL1

木造建築が近年
大きく変わってきました。

住宅だけでなく
学校や病院といった公共建築を
木で建てる例が増えているのです。

技術の進歩で強く作れるようになったから
木造を後押しする法律ができたから
言われていますが
理由はそれだけでしょうか?

今回のシリーズでは
エネルギー
地方
山との共生

の3つの視点から
近年の木造建築を見ていきたいと思います。

エネルギー自立と木造建築

東京・銀座に
12階の木造建築が完成しました。
木造と鉄骨のハイブリッド建築としては
日本で最も高い建物です。

日本ではこのように
木造の高層化はまだめずらしいのですが
実はヨーロッパでは
500年も前から
木造は高層化していました。

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これは16〜17世紀ごろの
ヨーロッパの町並みです。
4〜5階建ての木造の建物が
隙間なく並んでいます。

実はこの頃ヨーロッパでは
森林伐採が進み
木材の供給が足りていませんでした。

木がないなら
石や土などで家を建てたら
いいのに。

でも当時の人は
木造にこだわりました。

なぜでしょう?

なぜ木造建築だったのか

写真の昔のヨーロッパの木造建築
どうしてこんなに高層化して
しかもこんなに密集しているのでしょう?

町の外には
土地はたくさんあったのに。
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その理由は
「木が足りなかったから」
なのです。

木が足りないから
短い木で柱を作るので
小さな家が建ちます。

ただ小さい家が
点在するのは
問題がありました。

緯度の高いヨーロッパでは
冬が長く
非常に寒さが厳しい環境です。

そしてその当時の
煖房の燃料は
「木材」のみ。
木材が枯渇していたので
煖房に回す木も
極力節約しなければなりませんでした。

小さく作って
上や横に連結していくと
外気に接触する面積が減り
断熱効果が得られたのです。

共同の窯などを持ち
熱エネルギーも
共有していたそうです。

当時のヨーロッパの
木造の街並みは
町全体で木材を
有効活用した姿でした。

ヨーロッパでは
その考え方が現代の都市木造にも
引き継がれています。

ヨーロッパの多くの国は
天然ガスを外国に依存しているので
もしパイプラインを締められたら...
という危機感が強い。

資源が少ない
ヨーロッパならではの
エネルギーの自給自足を
念頭に置いた木造都市です。

ウィーンでは木造公団住宅に
緊急用の暖炉を設置することが
義務付けられています。

何の緊急用かというと、
エネルギー危機に陥ったときに
木を燃やすためのもの。

そういう仕組みが木造都市の中に
組み込まれているんです。

木造建築は
エネルギーの視点から見ると

断熱効果で燃料を節約できる

エネルギーの自給自足を
デザインできる

というメリットがあったのですね。

次回は
地方の視点から
書いていきますね!
お楽しみに。