なぜ今木造なの?VOL2

木造建築が近年
大きく変わってきました。

住宅だけでなく
学校や病院といった公共建築を
木で建てる例が増えているのです。

技術の進歩で強く作れるようになったから
木造を後押しする法律ができたから
言われていますが
理由はそれだけでしょうか?

今回のシリーズでは
エネルギー
地方
山との共生

の3つの視点から
近年の木造建築を
見ていきたいと思います。

前回はエネルギーの視点から書きました。
2回目の今回は地方の視点から
書いていきたいと思います。

地方

日本の人口は2010年ころから
減少傾向にあります。
日本人の人口はこの5年間で
178万人減少しています。

ただ外国人人口がこの5年間で
84万人増えているので
その差し引きで日本の総人口が
94万人減少となっています。
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人工は減ると
住宅着工も減ります。

日本では
個人が建てる低層住宅では
木造が9割を占め
非住宅では約1割にとどまっています。

つまり人口減で
住宅着工が減ると
木材の需要が
大きく減ってしまうのです。

そこで国は公共建物などの
木造化・木質化を『国策』として
バックアップし始めました。

2010年の
『公共建築物等における木材利用の促進に関する法律』
の施行を皮切りに住宅以外にも多くの
中大規模の建築計画に木が取り入れられています。
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近々では2018年から2019年にかけて
建築基準法の一部改正がなされ
より木材使用の規制が緩和されつつあります。

「公共建築の木造」って聞くと
都市に建つ木造をイメージしますが、
本当にそんな大都市開発がこれからも
続くのでしょうか。

ヨーロッパでは大都市ばかりではなくて
中山間都市の開発に力を入れ始めているそうです。

「開発」と言っても
もともとあった居住環境を活かして
ちょっと手を加えて住みやすくするもの。

木造で集合住宅や役所
学校などを作っています。

自治体の規模も
1000人に満たないような地域で
こういった開発によって人口減少を止めています。

小さな自治体なら公共建築も一つで十分で
一つの建物に役所や学校
マーケットなどを全部入れて
一か所で用が足りるようにしているのです。

非常にコンパクトなボリュームで設計して
エネルギー負荷を抑えて
そして未来の世代への負担を減らそうと
考えられています。

こういったコンパクトな建物だと
地域の木材で
地域の大工さんに頼んで作る
ということが可能です。

自治体の中で経済が回るので
好循環を生みます。

昔はタッチハウスでも
山から立ち木を切出して
製材所で製材していました。
原木市場に行ってかなりの大径材を買ってきたり
それを用途に合わせてちゃんと木取りしていくんです。

素材生産から建物づくりまでやっていましたね。

今またそんな方法が
見直されているような気がします。
こういうやり方だと
ウッドショックのような
グローバリゼーションの荒波にも
右往左往しないですみますしね。

次回は山との共生の視点から
お伝えしますね。
お楽しみに。

なぜ今木造なの?VOL1

木造建築が近年
大きく変わってきました。

住宅だけでなく
学校や病院といった公共建築を
木で建てる例が増えているのです。

技術の進歩で強く作れるようになったから
木造を後押しする法律ができたから
言われていますが
理由はそれだけでしょうか?

今回のシリーズでは
エネルギー
地方
山との共生

の3つの視点から
近年の木造建築を見ていきたいと思います。

エネルギー自立と木造建築

東京・銀座に
12階の木造建築が完成しました。
木造と鉄骨のハイブリッド建築としては
日本で最も高い建物です。

日本ではこのように
木造の高層化はまだめずらしいのですが
実はヨーロッパでは
500年も前から
木造は高層化していました。

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これは16〜17世紀ごろの
ヨーロッパの町並みです。
4〜5階建ての木造の建物が
隙間なく並んでいます。

実はこの頃ヨーロッパでは
森林伐採が進み
木材の供給が足りていませんでした。

木がないなら
石や土などで家を建てたら
いいのに。

でも当時の人は
木造にこだわりました。

なぜでしょう?

なぜ木造建築だったのか

写真の昔のヨーロッパの木造建築
どうしてこんなに高層化して
しかもこんなに密集しているのでしょう?

町の外には
土地はたくさんあったのに。
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その理由は
「木が足りなかったから」
なのです。

木が足りないから
短い木で柱を作るので
小さな家が建ちます。

ただ小さい家が
点在するのは
問題がありました。

緯度の高いヨーロッパでは
冬が長く
非常に寒さが厳しい環境です。

そしてその当時の
煖房の燃料は
「木材」のみ。
木材が枯渇していたので
煖房に回す木も
極力節約しなければなりませんでした。

小さく作って
上や横に連結していくと
外気に接触する面積が減り
断熱効果が得られたのです。

共同の窯などを持ち
熱エネルギーも
共有していたそうです。

当時のヨーロッパの
木造の街並みは
町全体で木材を
有効活用した姿でした。

ヨーロッパでは
その考え方が現代の都市木造にも
引き継がれています。

ヨーロッパの多くの国は
天然ガスを外国に依存しているので
もしパイプラインを締められたら...
という危機感が強い。

資源が少ない
ヨーロッパならではの
エネルギーの自給自足を
念頭に置いた木造都市です。

ウィーンでは木造公団住宅に
緊急用の暖炉を設置することが
義務付けられています。

何の緊急用かというと、
エネルギー危機に陥ったときに
木を燃やすためのもの。

そういう仕組みが木造都市の中に
組み込まれているんです。

木造建築は
エネルギーの視点から見ると

断熱効果で燃料を節約できる

エネルギーの自給自足を
デザインできる

というメリットがあったのですね。

次回は
地方の視点から
書いていきますね!
お楽しみに。